新宿御苑
『新宿御苑』
新宿御苑は、徳川家康より家臣であった内藤清成に授けられた江戸屋敷の一部であり、元々の土地はもっと広大でした。明治になり内藤家から上納された土地などより「内藤新宿試験場」と言う近代農業振興を目的とした研究の場となり、その後研究の場などは移設されて明治12年(1879年)に宮内省管轄の「植物御苑」となりました。宮内省の管轄となり皇室の御料地・農園として運営がなされ、現在の新宿御苑の日本庭園・西洋庭園などの大まかな原型が出来ました。明治39年(1906年)に「新宿御苑」となり、大正時代には西洋庭園が9ホールのゴルフコースとして利用されていたこともありました。戦後、昭和24年(1949年)に「国民公園新宿御苑」となり一般に開放されました。
~ 新宿御苑ホームページ 新宿御苑の歴史より ~
『対比』
都会の真ん中に途轍もなく大きなオアシスとして存在している『新宿御苑』。長い歴史の中で作られてきた庭園と、雨後の筍のように増え続ける巨大なビルとのコントラストが、内包する対比を強調しています。例えば公園の静けさと町の喧騒、植物の有機質と建物の無機質、スピードを求められるビジネスのOn-Timeとゆとりある余暇のOff-Time。街の中にも組織の中にもそして個人の中にも、対比は存在しています。そして、これらの対比の取捨選択を常に行っていかなければならないのが、歯科医院の院長なのかなと最近はおぼろげに感じてきています。
『バランス』
取捨選択の中には分かり易い選択もありますが、ほとんどの問題は簡単には選択できません。選択が難しい問題は、複雑に複数の対比が絡み合って存在し、判断を難しくしていたりもします。それらは往々にして極端な考えの選択は正しい事が少なく、中庸やバランスを取って選択する事が大切になるのではないかと思っています。ちょうど60年前に8年間のアメリカ合衆国大統領の任期を終えようとしていたアイゼンハワーも離任演説において、「良い判断と言うものはバランスと前進とを求めます。それ無しではアンバランスと失敗と言う結果になります。」と述べていました。良い判断のためにはバランスが重要になってきます。
『多様性』
判断しなくてはならない問題のバランスを取る時に意見が少なければ、選択肢も限られ何よりも議論に深みも無く一義的になりやすいです。しかし、もし多様な意見の中でバランスを取ることができれば白黒ではなくよりカラフルな色合いのようにより良いものになると思います。選択を迫られる組織や社会そして個人には、選択肢と言う観点からも多様性が重要になるのではないかと思います。島国の日本、そして狭い歯科業界では意識していかないと多様性を高める事も出来ないと思います。その上で多様性を高めて受け入れて、認める事を意識して行っていく必要もあるのかなと思います。
『相互作用』
多様なもののバランスと前進こそが良い判断(選択)に結び付くのですが、各々のその判断は何を基準に行っているのでしょうか。判断基準と言うものは人それぞれであり、個人の経験や考え方によって変わってくるものだと思います。そして、その経験や考え方はそれぞれの時代背景や社会的な環境によって作られるので変化しています。個人の経験や考え方から生まれた判断基準により社会が作られて、その社会によって個人の経験や考え方が蓄積されて作られていく、すなわち社会が個人の経験や考え方を形成するように、個人の経験や考え方が色々なバランスの上で社会を形成している、そんな相互作用の中でその時代や社会は形作られているのではないでしょうか。バランスの取り方や判断基準の全てがその時代や社会によって変化していくのは、これらの相互作用の必然のような気がします。
『これからの時代』
私たち歯科医師を取り巻く環境も社会の変化の波にのまれていますが、新型コロナウイルス感染症により更に大きくのまれています。この様な時代に変化は必然なのかと思いますが、時代と共に変化していかなければならないものや変化とは別に継承すべきものが交錯しています。だからこそ一度立ち止まって、大きなオアシスの小さな集合体の断片として思案していた時間も一興ではないかなと、そんなことを考えていた春の陽だまりでした。狭い診療室の中から大きなオアシスへ、こんな素敵な場所が四谷牛込に有るのは新しい発見でした。
文・写真 町田 賢太郎